ハイ・アンド・ロウ

どうしてこんなにも不安定なんだろうなぁ。依存するのは嫌なのに、誰かに抱きしめて欲しいという気持ちはしっかりと存在する。男という生き物に対して、嫌悪感だったり恐怖感だったりしか抱けないというのに、私は女性よりも圧倒的に強い存在感をもつ男というものに、どこかしら守られたいと思う気持ちが止められない。かと言って、実行に移すようなさばけた人間でもないので、じぃっとやり過ごすしかない。

なんてことはない。ずっと大学まではそうやって我慢してきたじゃないか。私に「甘える」ことを教えた奴は、私のつっかえ棒をポキっと折って、結局は日常に紛れて消えていった。不倫なんてそんなに禁断でもなんでもなく、情けない男と女の惰性の行き着く果てだ。私は男に自分の存在を求めていたあの頃を吐き気がするほど消したい過去だと思っているし、あの人の顔を思い出すと、恐怖感と泣いて罵りたい心境にかられる。16も年上だったあの男に、私は父性を求めていたんだろう。

私も相手も、ケダモノだったと思う。

汚い。

アンバランスな私のアイデンティティは、一体どうなっているんだろう。私はどこへ流れていくんだろう。

いつか、きっと皆私を忘れる。最初っから孤独だったのに。強く生きる頭も身体も、どこへ無くしてしまったんだろう。

それでもこのどうしようもない図体を引きずり生きていかねばならない。

ご飯を美味しいと思ったり、誰かといることを楽しいと思ったり、そういう「恐怖感」に襲われない生活なんて、大学時代の束の間の夢だった気がする。

本当は、誰と会っている時も、見捨てられ恐怖でブルブルなのだ。人見知りで心臓の鼓動を静めるのに必死なのだ。