二年前の恋人

文字通り身を狂わすほどの恋をして、ほとんど滅私奉公のように自分を押し殺し、自分が分からなくなるほど相手に尽くし、その関係を解消してから二年経った。正確にはまだ一年半。けれど、あいつは私が死んでも絶対に泣かない。それだけは確実に分かるというのに、一緒にいた場所に行くと、たまらなく辛くなる。それは彼を想ってなのか、当時の自分を想ってなのか、今の自分と比較してなのか。私は辛いその道を自分で選んでいたし、依存していた。

「あいつには私ぐらいしかいない、私が何とかしなきゃ」という思いは「もっと他の道もあるんじゃないのか」の問いを両脇に抱えて、破綻した。

自分から、相手に嫌われるように振舞った。そして嫌われた。じゃなきゃ死んでいた。気が狂っていた。今だって狂っているけれど、少なくとも男に依存はしていない。

それでも、あいつがまだ好きだ。だからといって会いたくも無い。一生会いたくない。ただ、折に触れ思い出すことがあると、転んだ傷を石で擦られるような思いがする。

私のレンアイはあそこで止まった。

おっさんを好きだった時、何に依存していたかと言えば、その温もりにあった存在感だった。ヒトの肌の温かさを手に入れるために、安心するために、嫌なことに目を瞑り、暴走していた。

前の彼には、安心感は微塵も無かった。自分が、守ってあげなくては、と思っていた。

私は、私に勃つ男が嫌いだ。欲情されることがたまらなく嫌だ。私に欲情しない男を、私はきっと好きになる。

今の人は私以外を見つけた方が良い。私は彼を欲していない。

お願いだから、私に欲情しないで、と思う。
相反する欲望があっても、私は今、性的感情が無いことを選ぶ。私という人格に、深く関わらないで欲しい。愛や恋が全てを解決できるわけじゃない。そんなにキレイなものじゃない。結局、彼が甘ちゃんに思える。泥にまみれた自分には、ちっともピッタリ来ない。要らない・・・と。だって、彼は理解し得ない。「男」だから。彼らと同じ生き物だと。

彼は私の理解者足らない。支えにならない。私は彼を支えられない。セックスしたくない。そういう深いところで関わりたくない。

どんな理由をつけたところで、私は彼と寝たくないだけなのかもしれない。

彼を知れば知るほど、悲しくなる。

不安な時に、セックスすることで誰かを繋ぎとめようとしなければ良かった。好きだからセックスするのは、女だけなのだ。男は隣に女が寝たら、よっぽどのことが無ければ、欲情する生き物だから。余計に男が信じられない自分だけが残った。

一生セックスしなくて良いから、男でも女でもない生き物になりたい。